任意後見制度などじっくり考えていたら、基本に返ってみるべきだと思いました。そこで民法総則のおさらいです。
民法第3条1項 私権の享有は、出生に始まる。
人は生まれながらにして権利能力(=権利や義務の主体となれる能力)があるということです。これはどんな状態になっても生きている限り続きます。
続いて意思能力。行為の結果を認識できる精神能力で、7~10歳程度の知的判断能力が目安とされています。従って生まれたての赤ちゃんにはもちろん、一時的に正体不明に泥酔してしまった人にもその時は意思能力はありません。でも権利能力には何の影響もなく、ぴかぴかの権利や義務の主体となれる能力は存在します。意思能力を欠いた法律行為の意思表示は無効です(民法第3条の2)。
そして行為能力。単独で有効に契約できる能力です。「単独で」「有効に」「契約」できない者として民法が規定している制限行為能力者には4類型あり、それが未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人です。この立法趣旨は制限行為能力者の保護であり、もちろんここにあてはまっても権利能力があることにはまったくかわりはありません。
成年に達していない者が未成年者です。未成年者のする法律行為については、原則その法定代理人の同意を得なければなりません。例外として民法第5条・6条等にある①単に利益を得、又は義務を免れる法律行為②法定代理人が処分を許した財産③営業を許可された未成年者のその営業に関する行為④身分行為、は未成年者が単独で行えます。
成年被後見人・被保佐人・被補助人
この3者はその事理を弁識する能力の常況によって、請求により家庭裁判所の審判で決まります。
| 成年被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 | |
|---|---|---|---|
| 意味(精神上の障害により事理を弁識する・・) | 能力を欠く状況にある者 | 能力が著しく不十分である者 | 能力が不十分である者 |
| 保護者の同意権 | なし | あり(追加できる) | なし(追加できる) |
| 保護者の代理権 | あり | あり(追加できる) | なし(追加できる) |
| 保護者の追認権 | あり | あり | あり |
| 保護者の取消権 | あり | あり | あり |
成年被後見人は意思能力を欠くので保護者の同意権はありません。たとえ保護者が同意したとしても、意思能力のない者の行った法律行為は無効だからです。無効な法律行為ははいつでも誰に対しても無効です。
被保佐人がする法律行為の中で、保佐人の同意を必要とするのは民法第13条に列挙されているものです。つまりここに掲げてあるもの以外の法律行為は同意なしでもできるということです。ただしこの同意を要する行為を、家庭裁判所は追加することもできます。被補助人の場合はもっと広く、そもそも本人の同意がなければ補助開始の審判はできないし、補助人に同意権を付与するにも被補助人の同意が必要です(民法15条、17条)。しかもその同意権行使の範囲は民法13条に列挙されているものの一部に限ります。
人には権利能力があり、自由意思で契約を結ぶことができます。公序良俗に反することがない限り、強制されて契約をしたり破棄したりということはあってはならないことです。しかし、様々な理由で事理弁識能力(完全にイコールではありませんが、意思能力に近いものだと考えられます)が不足してしまったとき、そこに付け込まれることのないようにその人を守る必要があります。それが成年後見制度で、しかし契約自由の原則のもとその規制は最小限・適正でなければならないのです。人の自由と尊厳と保護とのバランスなのです。そこで後見制度にはこの法定のものと任意のもの(任意後見制度)があり、さらには別に信託法による民事信託など自らを守るための様々なスキームが存在しています。民法の理念である「権利能力平等の原則、所有権絶対の原則、私的自治の原則(契約自由の原則、過失責任の原則)」が根底にあっての制度であると忘れてはいけないのだと改めて思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
